個人事業主として事業を行っていると、一定の規模や利益が出てくることで「法人成り」を考えるタイミングが来ることがあります。法人成りとは、個人事業主が法人に変わることで、税務や会計において多くの変更が発生します。今回は、法人成り後の所得税申告から法人設立に伴う手続き、法人経費の取り扱いについて、実務的なポイントを解説します。
法人成り後の所得税申告の留意点
法人成り後も必要な確定申告
法人成りをした場合、個人事業主としての最終年には所得税の確定申告を行う必要があります。法人成りした年も、1月1日から法人設立日(廃業日)までの期間について、個人事業主としての所得税の確定申告が求められます。
個人事業主が消費税課税事業者の場合、廃業日までの期間について消費税申告も必要です。
廃業した年に認められる経費
一括償却資産(取得価額20万円未満で3年償却)のうち、必要経費として計上していない部分は、廃業年度に全額必要経費に算入します。
個人事業税は通常、支払時に経費に計上しますが(つまり翌年に計上)、廃業年度は見込額を廃業年度の必要経費に計上できます。
役員報酬の取り扱い
法人設立後、役員報酬を受け取る場合、その報酬は「給与所得」として扱われ、確定申告または年末調整を通じて申告します。
法人設立に伴う手続きと資産引き継ぎ
廃業届など
法人成り時は、所轄税務署に「個人事業の廃業届出書」を提出します。青色申告をしていた場合は「青色申告の取りやめ届出書」も併せて提出します。その他、必要に応じて、「給与支払事務所等の廃止届出書」、消費税の「事業廃止届出書」も提出します。
インボイス発行事業者の場合の注意点もあります。消費税の「事業廃止届出書」を提出することで、事業を廃止した日の翌日にインボイス発行事業者としての登録が失効することとなります。つまり、事業用資産を設立した法人に買い取ってもらった後に事業廃止届出書を提出するなど、すべての取引が終わったあとに届け出をだすようにしましょう。
従業員がいる場合の手続き
従業員がいる場合は、その転籍手続きも行わなければなりません。社会保険・雇用保険の資格喪失・取得手続き、住民税の特別徴収先変更、雇用契約書の締結や就業規則の見直しも行います。
また、転籍時に個人事業時代の退職金を支給する場合、債務が確定していれば必要経費に算入できます。しかし、法人転籍後に退職金の支給がある場合、個人事業主時代の勤務に対する退職金は経費として認められないことに注意が必要です。転籍後も相当期間勤務した場合は、法人の退職金として認められるでしょう。
転籍後すぐに従業員の退職が予定される場合などは事前に確認しておくことが重要です。
資産の引き継ぎ
個人事業で使っていた資産(事務所の設備や機械など)を法人に引き継ぐには、「現物出資」、「売却」、「贈与」、「貸付」の方法があります。
資産を現物出資することで、資本金として計上する方法もありますが、多くは帳簿価額での売却です。帳簿価格で法人に売却すれば、個人側に売却益は発生しませんが、消費税課税事業者の場合は消費税の課税対象となることに注意が必要です。
法人成り前後の経費計上関係
法人設立のための費用
法人化にかかる費用は、「創立費」「開業費」として法人の繰延資産になります。設立準備から設立までの費用が「創立費」、設立後~営業開始までの費用が「開業費」です。
これらは繰延資産として計上し、任意のタイミングで償却して経費化できます(利益が多い年度に償却する等の調整が可能です)。
設立後の事業関連費用
法人設立後に事業に関連する出費(事務所の賃貸料、設備購入、従業員給与など)は、法人経費として計上します。
帳簿・証憑の整理
個人事業と法人の帳簿は明確に分け、領収書や契約書も整理しておきましょう。
法人成りは、税務や会計において多くの変更が伴います。必要な手順を確認し計画的に進めていくことで、スムーズに法人化を進めていきましょう。
【日記】
朝は雨天でウォーキング。決算、打合せ。本人の希望で長女の習い事申し込みも。
【姉妹日記】
長女の宿題の音読。聴き応えがあって楽しく聞いています。次女も引き込まれて毎日聞き入っていましたが、今日は「おんどくきいて!」とやってきました。
聞いておぼえた小4の教科書のものがたりを、破った紙にじぶんのことばと文字でかいています。せっかくかいたのに見ているふりだけして結局そらんじています。「おねえちゃんよりはうまくないけど・・・」と前置きして。