「会社分割」は、会社の組織再編の手法のひとつです。とくにM&Aで「引き継ぐ事業を限定したい」ときに便利に使えるスキームです。
ここでは、帳簿価格を引き継ぐことができる「適格分割」を例に、税務署への提出書類に必要な代表的なものを3つ取り上げます。
「組織再編に係る主要な事項の明細書」と「契約書の写し」
会社分割など組織再編を行った場合には、法人税申告の際にいくつか添付書類が必要です。
まず再編の基本を示す書類として、以下の2点が求められます。
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組織再編に係る主要な事項の明細書:
分割の目的・効力発生日・承継資産など、スキームの概要をまとめたもの。法人税申告書の別表1に添付します。 -
契約書の写し(分割契約書の写しなど):
法的効力の根拠となる契約書の写しを、申告書に添付して提出します。
それぞれ、別表1の「添付書類」欄に◯をつけて、提出忘れを防ぎましょう。
「期中損金経理額」や「一括償却資産」の届出
次に必要なのが、会計処理に関する届出です。
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「適格分割等による期中損金経理額等の損金算入に関する届出」:分割日が事業年度の途中にある場合、減価償却費など「どちらの会社で損金にするか」を明確にするための届出です。
例)9月末に分割 → 1~9月分の償却費を分割元に計上したい場合に必要。
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「適格分割等による一括償却資産の引継ぎに関する届出」:備品などの少額資産をまとめて償却している場合、分割先の会社が引き継いで償却を続けるための届出です。
どちらも「適格分割の日から2か月以内」に提出が必要です。提出漏れにより税務上の取り扱いが変わるため要注意です。
「消費税課税事業者届出書」(基準期間)
最後は消費税関係です。課税事業者かどうかは主に、「基準期間(原則として前々事業年度)の課税売上高」で判定されます。しかし、組織再編があった場合の「基準期間の課税売上高」については特例があります。
新設分割により新しく設立した会社で、基準期間がないからといって免税事業者になるとは限りませんので注意が必要です。
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新設分割:新会社には基準期間がないため、親会社の売上高をもとに判定。親会社の売上が大きければ、新会社も最初から課税事業者となる場合があります。
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吸収分割:承継会社は自社の基準期間だけでなく、分割元の売上もあわせて見る必要があります。
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分割元会社:自社の基準期間で判定します。
消費税の課税・免税は要チェックです。また、簡易課税を継続・選択できるかどうかも確認し、必要な手続きをすすめましょう。